東京時間のレンジ相場で「ブレイクアウトだ」と思ってエントリーしたら、すぐに戻されて損切り──このパターンを繰り返す理由は、相場ではなくトレーダー自身の心理にある。

日本時間の9時〜15時(東京セッション)は、一般的にボラティリティが低く、相場がレンジを形成しやすい時間帯だ。しかし多くのトレーダーがこの時間帯に損失を積み重ねている。なぜか?

東京時間の特性を理解する

東京セッションは、世界の主要市場の中で最も流動性が低い時間帯の一つだ。ロンドン市場(17時〜)やニューヨーク市場(22時〜)と比べると、参加する機関投資家の数も少なく、大きな方向性が出にくい。

一般的な東京時間の特徴:

  • レンジ幅: USDJPY で20〜40pips程度
  • ボラティリティ: ロンドン・NYの60〜70%程度
  • 重要指標: 日本の経済指標(貿易収支、CPI等)が発表される時間

この特性を理解せずに、「ブレイクアウトを狙う」手法を適用すると、ダマシに遭いやすくなる。

なぜトレーダーはレンジ相場でダマシに引っかかるのか

「動き出しを掴みたい」という心理

東京時間にトレードするトレーダーの多くが「今日の動きの方向性を早めに掴みたい」と考えている。

しかし、東京時間のブレイクアウトの多くは「フェイク」だ。機関投資家が「小さな参加者」(個人投資家)の損切り注文を巻き込みながら、仕込みポジションを構築するために意図的に作られたケースもある。

チャート上でレジスタンスラインを少し超えた瞬間に買いでエントリーすると、その瞬間に大きな売りが入り、急速に元の価格帯まで戻される。この「罠」に何度も引っかかるトレーダーは少なくない。

「ヒマ」がもたらすエントリーの焦り

東京時間にトレードする日本人トレーダーにとって、特に危険なのが**「退屈さからくるエントリーの衝動」**だ。

相場が動かない時間が続くと「何かエントリーしなければ」という焦りが生まれる。この焦りは、FOMOとは少し異なる。利益を逃すことへの恐怖というより、「何もしないことへの不快感」だ。

人間は、特に目標指向の状況では「行動しないこと」に強い不快感を覚える。これは進化的な本能で、原始時代には「何もしない = 餓死の危険」に直結していた。

しかし現代のFXトレードでは、「何もしない」ことが最もリターンが高い選択肢になることがある。

確証バイアスによるライン引き

もう一つの心理的トラップが確証バイアスだ。

「USDJPY は今日上昇するはず」という先入観を持った状態でチャートを見ると、上昇を示唆するようなラインやパターンを無意識に見つけようとする。

そして、若干曖昧なレジスタンス突破を「ブレイクアウト確認」と解釈し、買いエントリーする。しかし実際には相場はレンジ内に留まっており、すぐに値戻しが起きる。

東京時間のトレードで守るべき原則

1. レンジ幅の事前確認

トレード前に過去30日間の東京時間のレンジ幅の平均を確認する。例えば「USDJPY の東京時間平均レンジが30pipsだった場合、すでに25pips動いている状態では新規エントリーは控える」というルールを設ける。

2. ブレイクアウト確認の条件を厳格化

「少し超えた」ではなく、「明確に超えてから一定時間(例:5本のローソク足)維持された場合のみエントリー」という条件を設ける。

これにより、ダマシのブレイクアウトへのエントリーを大幅に減らせる。

3. 東京時間はレンジ戦略専用にする

東京時間の特性を受け入れ、「この時間帯はブレイクアウトを狙わない。レンジ内の反転を狙うか、トレードしない」と決める。

ブレイクアウト狙いはロンドン時間の開始(17時頃)に行うことで、本物の方向性が出るタイミングと戦略を合わせることができる。

4. 「何もしない」をトレード戦略として認識する

「今日の東京時間はトレードしない」という判断を、逃げや失敗ではなく積極的な戦略の選択として捉える。

トレードしない日のトレード日誌には「東京時間はレンジと判断、ノートレード。ロンドン時間に持ち越し」と記録する。この記録の積み重ねが、「何もしないことへの不快感」を和らげる。

まとめ:東京時間は準備の時間

東京時間は、利益を出す時間というよりも情報収集と準備の時間として位置づけると、心理的に楽になる。

日本の市場動向を確認し、重要なサポート・レジスタンスを確認し、ロンドン・NY時間の戦略を立てる。この準備時間として使うことで、東京時間の「退屈さ」も意味のある時間に変わる。

相場に合わせて戦略を変える柔軟性こそが、FXトレーダーに最も必要なメンタルスキルの一つだ。