4連敗した。
1敗目は-28pips(2,800円)。「ルール通りの損切り、問題なし」と思っていた。
2敗目は-35pips(3,500円)。「調子が悪い日があるのは仕方ない」。
3敗目は-41pips(4,100円)。「ここからが正念場、ルールは変えない」。
4敗目は-52pips(5,200円)。「なんで?どうして?何が間違ってるんだろう」。
合計-156pips、15,600円の損失。証拠金50万円に対してまだ3%ほどだが、精神的にはもう限界に近い。
(取り返さないといけない。でも今トレードしたら絶対また負ける気がする)
これがドローダウン期の典型的な心理状態だ。
ドローダウン期に脳で何が起きているか
ドローダウンとは、資産の最高値からの下落幅のことだ。4連敗で証拠金が減り続けている状態は、ドローダウン期と言える。
この時期、脳内では複数のストレスホルモンが活性化する。
コルチゾールは「慢性ストレスホルモン」と呼ばれ、連続した損失によって分泌が増加する。コルチゾールが高い状態では、前頭前野(冷静な判断を司る部位)の機能が低下し、扁桃体(恐怖・怒りなどの感情を司る部位)が優位になる。
平たく言うと、「冷静に考える力が落ちて、感情的になる」。
さらに、4連敗という「連続した痛み」は、損失回避バイアスをより強烈に刺激する。プロスペクト理論によれば、人間はもともと損失を利益の2倍重く感じるが、連続損失の後はこの感度がさらに上がることが知られている。
「この痛みを今すぐ消したい」という衝動が高まる。
その衝動の名前は「リベンジトレード」。
リベンジトレードが命取りになる理由
リベンジトレードとは、損失を取り返すためにルールを曲げて大きなロットでトレードする行動だ。
典型的なパターン:
4連敗後、通常1万通貨のところを3万通貨でエントリー。「1回勝てば取り返せる」という計算。しかし市場は自分の損失を知らない。そして高いコルチゾール状態での判断は精度が低い。
もし-50pipsで損切りすると:
- 通常ロット(1万通貨):5,000円の損
- リベンジロット(3万通貨):15,000円の損
4連敗で失った分(例えば15,600円)を一発のリベンジトレードで上回る損失が出る。
「取り返そうとして、さらに大きく失う」。これがリベンジトレードの末路だ。
(頭では分かってる。でも体が動いてしまう)
この感覚は、意志の弱さではない。ストレスホルモンによって冷静な判断能力が低下した状態で、古い脳(感情系)の命令に従っているだけだ。
ドローダウン期の3つのルール
ルール1:ロットを半分に落とす(ドローダウン20%で強制発動)
最初に決めておくべきルールがある。
「証拠金が20%減ったら、次のトレードからロットを半分にする。30%減ったら、一週間トレードを停止する」
なぜロットを半分にするのか。損失が続いている時期は、自分の手法と現在の相場環境が合っていない可能性が高い。その状態で同じロットを続けることは、間違いをより大きく繰り返すことになる。
ロットを半分にすれば、損失の加速を抑えられる。そしてより重要な効果がある。ポジションの重さが軽くなることで、感情的プレッシャーが下がり、冷静な判断が戻りやすくなる。
ルール2:「なぜ負けたか」を記録してから次のトレードをする
4連敗した後、反省せずにすぐ次のトレードに向かうのは危険だ。かといって、感情的な状態で「失敗の原因分析」をするのも精度が低い。
おすすめするのは「1時間のクールダウン後に記録する」習慣だ。
4連敗した場合、各トレードについて:
- エントリーの根拠は何だったか
- 損切りはルール通りだったか
- 相場の流れに逆らっていなかったか
これを事実ベースで記録する。感情的な反省(「なんでこんなトレードをしたんだろう」)ではなく、事実の確認(「ここでエントリーしたのは〇〇の根拠があったから」)に集中する。
記録してみると、「ルール通りのトレードが4連敗した」か「ルールから外れたトレードが4連敗した」か、どちらかが分かる。ルール通りの負けは、手法の問題ではなく確率的な揺れの可能性が高い。ルール外れの負けは、改善すべき行動の問題だ。
ルール3:回復は「小さなロットから段階的に」
ドローダウンから回復するとき、多くのトレーダーは「早く戻したい」という焦りから、大きなロットでスタートしようとする。
これは逆効果だ。
回復期は精神的に不安定なことが多く、また過信(「もう大丈夫」)になりやすい。最小ロットから再スタートし、3連勝したら元のロットに戻す、という段階的アプローチが、心理的安定と資金保護の両方に効く。
ここで一つ、不確かながら伝えたいことがある。
「ドローダウンの中に学びがある」という格言をよく見るが、連敗している最中に「これは成長のチャンス」と思えるトレーダーは、正直あまりいない。思えなくて当然だ。
傷ついたとき、「これは学びだ」と即座に思える人は感情が麻痺しているか、相当な達人かどちらかだろう。
普通は、ただ痛い。焦る。
その痛みを感じることを否定しなくていい。ただ、「痛みを感じている最中はトレードしない」「回復してから振り返る」という手順だけ守れれば、ドローダウンが破滅に繋がることを防げる。
今日からできる1つのこと
今日の夜、自分の証拠金の20%と30%の金額を計算して、メモしておく。
例えば証拠金が50万円なら:
- 20%減少ライン:40万円(ロット半減ライン)
- 30%減少ライン:35万円(一週間休止ライン)
これを手帳かスマホのメモに書いておく。
ドローダウン期に「今のルールを決める」ことはできない。感情に支配されているから。だから今、冷静な状態でルールを作っておく。これが「システムで感情をバイパスする」という最も現実的な方法だ。
よくある質問
Q: 4連敗はドローダウン期と言えますか?手法がおかしいのでしょうか?
A: 勝率50%の手法でも、確率論的に4連敗は約6%の確率で起きます(0.5の4乗)。まず「ルール通りのトレードだったか」を確認しましょう。ルール通りで負けたなら、手法の問題より確率的な揺れの可能性が高いです。ただし10連敗が続くなら、手法と現在の相場環境のミスマッチを疑う価値があります。
Q: リベンジトレードをしないために、証拠金を減らしておく方法は有効ですか?
A: 有効な方法の一つです。FX口座に「戦闘資金」と決めた額だけを入金し、残りは別口座で管理する方法は、心理的な損失プレッシャーを下げる効果があります。「全財産がここにある」という状態は、ドローダウン時の判断を特に歪めます。
Q: ドローダウン期に「絶対勝てる」と思えるトレードが来ました。ロットを増やして良いですか?
A: おすすめしません。ドローダウン期は認知バイアスが強くなっている状態です。「絶対勝てる」という確信は、冷静な判断ではなく損失を取り返したい感情から来ている可能性が高いです。そういう時こそ、通常ロット以下に抑えるルールを守ることが重要です。
Q: ドローダウンから回復した後、元の証拠金に戻すためにはどれくらい勝率が必要ですか?
A: 数学的に見ると、20%のドローダウンからの回復には25%の利益が必要です(0.8×1.25=1.0)。30%のドローダウンなら43%の利益が必要です。だからこそドローダウンを深刻化させないことが最も重要で、20%ラインでのロット半減が大切な意味を持ちます。
Q: ドローダウン中、トレード仲間に相談するのは良いことですか?
A: 相談相手の質によります。「おれも同じことがあった、こうしたら良くなった」という経験者の話は有益です。一方でSNSの「こうすれば取り返せる」という煽りは危険です。また相談する行為自体が気持ちを楽にし、冷静さを取り戻す助けになることもあります。重要なのは、相談後にルールを変更しないことです。
