帰宅後の解放感と、今夜の緊張

電車のドアが開いた瞬間、スマホを取り出していた。

17:15。東京時間はドル円が148.20-148.60のレンジで終了。まあ、可もなく不可もなく。でも問題は今夜だ。明日の22:30(冬時間)に2月の雇用統計。市場予想は非農業部門雇用者数が前月比+18万人。

「今夜は早く寝るつもりだったのに…」

家のドアを開けると、妻が「お疲れさま」と言ってくれる。でも頭の中はすでにチャートのことでいっぱい。夕食を食べながらも、ポケットのスマホが気になる。ロンドン勢が入ってきて、ドル円が動き始めているはず。

帰宅直後のトレード心理──疲労と興奮の狭間

仕事のストレスを引きずったままチャートに向かうのは危険だと分かっている。でも「やっと自分の時間」という解放感が、判断を甘くする。

19:00にパソコンの前に座った。ドル円、148.45。東京時間の高値を少し上抜けている。「これ、上に行くんじゃないか?」

──いや、待て。今の自分の状態を冷静に考えよう。

疲労度: 7/10。今日は会議が3つもあった。 集中力: 5/10。夕食中も相場のことを考えていた。 感情状態: 少し興奮気味。「取り返したい」気持ちがある。

そう、昨日の損失がまだ尾を引いている。-23pips、2万3千円。大きな金額じゃないけど、「もったいない」という気持ちが消えない。この状態でエントリーするのは、疲労運転と同じ。

でも、チャートは誘惑的に光っている。

ロンドンセッション開始──東京レンジブレイクの心理メカニズム

16:00のロンドンオープンから1時間。予想通り、東京時間のレンジが上に抜けた。

これは単なる偶然ではない。心理的なメカニズムがある。東京時間にレンジの上限(148.60)で売りを仕掛けた人たちが、ロンドン勢の買いによって損切りを強制される。その損切りの買い戻しが、さらに上昇を加速させる。

「ストップロス・ハンティング」──ロンドン勢が意図的に日本勢のストップを狙い撃ちする現象。これに巻き込まれた経験は、日本のFXトレーダーなら一度はあるはず。

148.70…148.80…。

「乗り遅れた。でも今から入るのは危険すぎる。」

この葛藤こそが、欧州時間の最大の心理的特徴。動いているのを見ると乗りたくなる。でも高値掴みの恐怖もある。結果として、中途半端なタイミングでエントリーして、すぐに反転に巻き込まれる。

雇用統計前夜の特殊な心理状態

今夜は特別だ。明日の22:30に雇用統計が控えている。

この「指標前夜」の心理状態は独特。期待と不安が入り混じって、普段なら絶対しないトレードをしてしまう。「一晩で100pips動くかもしれない」という甘い期待が、リスク管理を狂わせる。

21:00。ドル円は148.95まで上昇。もう149円に手が届きそう。

SNSのタイムラインには「ドル円ロング継続」「149円突破待ち」の投稿が並ぶ。みんな同じ方向を向いている。この「同調圧力」が、日本のFXトレーダーの判断を曇らせる。

「みんな買ってるのに、自分だけ様子見なんて…」

でも冷静に考えてみよう。雇用統計の結果次第では、一瞬で50pips逆に動くこともある。今のポジションを明日まで持ち越すリスクは?

NYセッション開始──黄金の時間帯の誘惑

22:00。ニューヨーク市場がオープンした。

ロンドン-NYオーバーラップの時間帯。1日で最もボラティリティが高い「黄金の時間帯」の始まり。ドル円は149.15まで上昇している。

この時間帯の心理的な特殊性は、「一番動く時間に起きていることの意味」にある。サラリーマンの自分が、平日の夜中に起きてトレードしている。この非日常感が、アドレナリンを分泌させる。

「今夜は大きく動く。逃したくない。」

でも、この興奮状態こそが危険。深夜のアドレナリンは、冷静な判断を鈍らせる。昼間なら絶対に取らないリスクを、夜中だと平気で取ってしまう。

妻が寝室から「まだやってるの?明日早いんじゃない?」と声をかけてくる。

「あと30分だけ…」

この「あと30分だけ」が、深夜トレードの魔法の言葉。でも30分後には「あと30分だけ」がもう一度来る。気がつくと午前2時。睡眠不足で翌日の仕事に支障が出る。

指標ギャンブルの甘い罠

22:30まであと20分。雇用統計の発表時刻が近づいてくる。

「指標ギャンブル」の誘惑が最高潮に達する瞬間。「一瞬で100pips動く」という期待が、リスク管理を完全に麻痺させる。

でも現実を見てみよう。雇用統計後のドル円の動きは予測不可能。市場予想を上回っても下がることがあるし、悪い数字が出ても上がることがある。なぜなら、重要なのは数字そのものではなく、「市場がその数字をどう解釈するか」だから。

2万通貨のロングポジション。証拠金10万円に対して、約12万円分のポジション。レバレッジは12倍。

もし雇用統計で50pips逆行したら?-10万円。証拠金の半分が一瞬で消える。

「…やばい。これはギャンブルだ。」

深夜の判断力と睡眠の科学

23:45。もう日付が変わろうとしている。

睡眠と判断力の関係は科学的に証明されている。24時間起きていると、血中アルコール濃度0.1%と同程度の判断力低下が起きる。これは酒気帯び運転レベル。

深夜のトレードは、酒気帯び状態でハンドルを握るのと同じ。

でも、この時間帯のSNSは活発だ。「ドル円149.5タッチ!」「爆益継続中!」の投稿が次々と流れてくる。FOMO(取り残される恐怖)が最大限に刺激される時間帯。

「みんな稼いでるのに、自分だけ寝るなんて…」

この心理的な罠に気づくことが、深夜トレードで生き残るための第一歩。

「もう寝る」という決断の技術

0:30。ロンドンフィックスの時間。

月末のロンドンフィックスは特に荒れる。企業の月末決済が集中するため、通常とは異なる値動きが発生する。ドル円が一時149.8まで上昇した後、149.2まで急落。

「何この動き…」

これがロンドンフィックス特有の動き。実需の決済が相場を一時的に歪ませる。この動きについていこうとすると、往復ビンタを食らう。

1:00。そろそろ限界だ。

「もう寝る」という決断は、実はトレードスキルの一部。無理に起きていても、判断力が落ちた状態では良いトレードはできない。

指値を149.5に入れて、逆指値を148.5に入れる。100pipsのリスクを取って、50pipsの利益を狙う。リスクリワード比は1:0.5。数学的には不利だけど、雇用統計で大きく動く可能性を考慮した設定。

「これで寝よう。結果は明日の朝に確認する。」

今夜のトレーダー心理ポイント

雇用統計前夜の今夜、特に注意すべき心理的バイアスは3つ。

1. 指標ギャンブル症候群 「一晩で大きく稼げる」という期待が、リスク管理を狂わせる。対処法:ポジションサイズを普段の半分にする。

2. 深夜アドレナリン中毒 夜中の興奮状態が、冷静な判断を妨げる。対処法:23時を過ぎたら新規エントリーしない。

3. FOMO(取り残される恐怖) SNSの爆益報告を見て、焦ってエントリーしてしまう。対処法:SNSアプリを一時的に削除する。

明日は金曜日。週末を控えて、ポジション整理を考える人も多いはず。雇用統計の結果次第では、大きなポジション調整が入る可能性もある。

今夜の1行メンタルアドバイス:「寝られる枚数しか持たない。それが深夜トレーダーの鉄則。」

FAQ

Q: 雇用統計の発表時間に起きていられません。ポジションを持ったまま寝ても大丈夫ですか?

A: 指値と逆指値を必ず設定してから寝てください。雇用統計は100pips以上動くことがあるため、ストップロスなしでの持ち越しは危険です。睡眠不足でトレードするより、適切なリスク管理をして寝る方が賢明です。

Q: ロンドンフィックスとは何ですか?日本のトレーダーに影響はありますか?

A: ロンドンフィックスは日本時間0:00(夏時間は23:00)に決まる基準レートです。企業の外貨決済が集中するため、この時間帯は通常とは異なる値動きが発生します。特に月末は動きが大きくなるため、注意が必要です。

Q: 深夜にポジションを持つと、翌日の仕事に集中できません。どうすればいいですか?

A: ポジションを持ったまま仕事をするのは、精神的に非常に負担です。夜間にトレードする場合は、必ず利確・損切りラインを設定し、翌朝までに決済するルールを作ることをお勧めします。

Q: NYセッションの値動きが激しすぎて、ついていけません。

A: NYセッション、特にロンドンとのオーバーラップ時間帯(22:00-2:00)は1日で最もボラティリティが高い時間です。この時間帯は無理についていこうとせず、指値・逆指値での機械的な取引に徹することが重要です。

Q: 雇用統計で大きく動いた後、すぐに反転することがありますが、なぜですか?

A: 指標発表直後の動きは、アルゴリズム取引や短期投機筋によるものが多く、実際の経済状況を反映していない場合があります。発表から30分-1時間後の動きの方が、より持続的なトレンドを示すことが多いです。

Q: 金曜日のNYクローズ前にポジションを閉じるべきですか?

A: 週末リスク(政治的イベント、自然災害等)を考慮すると、金曜日のNYクローズ前にポジションを整理するのが安全です。ただし、スワップポイントが3日分付与される通貨ペアもあるため、リスクと利益を天秤にかけて判断してください。


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