帰りの電車でスマホを開いた。東京時間はドル円が10pipsのレンジだったのに、ロンドン勢が入ってきてユーロドルが急に動き始めている。ECBの理事会結果待ち──。急いで帰らないと。

(でも、疲れてるんだよな…今日は見るだけにしておくか?)

帰宅後トレードの心理──17時からの解放感と危険

やっと自分の時間。スーツを脱いで、パソコンの前に座る。MT4を開くと、ユーロ円が東京の高値を20pips上抜けている。

「今日こそは」──この言葉が頭をよぎる瞬間、すでに危険信号だ。

仕事のストレスを引きずったままエントリーするのは、空腹でコンビニに入るのと同じ。必要以上に大きなポジションを取りたくなる。証拠金10万円で1万通貨が適正なのに、「今日は2万通貨で」と指が動く。

実際、帰宅直後の17-19時は「リベンジトレード」の発生率が最も高い時間帯と言われている。東京時間で-15pipsの含み損を抱えた佐藤さん(38歳・営業課長)が、欧州時間で取り返そうとして-50pipsまで広げてしまう。あるあるすぎて笑えない。

「夕食だよ」と妻に呼ばれても、チャートが気になる。箸を持ちながらスマホをチラ見する自分に嫌気がさす。(子どもが「パパ、スマホばっかり」と言った時の胸の痛み、分かりますよね?)

ロンドンセッションの心理──16時からの「ストップ狩り」に翻弄される

ロンドンオープンの16時(夏時間15時)。ここから相場の性格が一変する。

東京時間の穏やかなレンジが、まるで嘘のように破られていく。ドル円が朝の高値149.80を抜けた瞬間、逆指値の連鎖が始まる。150.00のストップロスを巻き込んで、一気に150.20まで上昇。

これを「ストップ狩り」と呼ぶが、実際は狩られているのではなく、需給の自然な流れ。ロンドン勢の大口注文が、東京時間で積み上がったポジションを一掃する。分かっていても、自分のポジションが狩られると「仕組まれた」と感じてしまう。

プロスペクト理論で説明すると、人は損失を利益の2倍強く感じる。-30pipsの痛みは、+30pipsの喜びより遥かに大きい。だからロンドンオープンの急変動に、感情的に対応してしまう。

「もう少し待てば戻るはず」──この思考が命取り。ロンドン勢は日本時間の深夜まで相場を支配する。彼らのペースに巻き込まれないためには、東京時間とは別のゲームが始まったと考えること。

NYセッション・オーバーラップ──22時からの「黄金の時間帯」の心理

22時。ニューヨーク市場がオープンし、ロンドンとのオーバーラップが始まる。

1日で最もボラティリティが高い「黄金の時間帯」──でも、この表現に騙されてはいけない。黄金なのは、準備ができているトレーダーにとってだけ。

今夜はECB理事会の結果発表。21時45分(夏時間20時45分)にラガルド総裁の記者会見が始まる。「インフレ目標への道筋は順調」という定型文でも、微妙なトーンの違いでユーロが50pips動く。

この瞬間、多くの日本人トレーダーが「指標ギャンブル」に手を出す。発表前にポジションを取って、運任せ。これは投資ではなく、カジノだ。

深夜のアドレナリンが判断力を狂わせる。普段なら絶対にやらない「両建て」や「ナンピン」に手を出してしまう。夜の興奮状態は、昼間の冷静さを完全に奪う。

(もう23時か…明日も仕事なのに。でも、この動き、逃したくない。)

この内心の葛藤こそが、深夜トレードの最大の敵。

深夜トレードの心理リスク──2時以降の「あと30分だけ」の危険

午前2時。NYセッションも落ち着き、オセアニア勢がぽつぽつと入ってくる時間。

「あと30分だけ見よう」──この言葉を何回言ったか数えてみてほしい。睡眠不足は、投資判断に致命的な影響を与える。スタンフォード大学の研究によると、睡眠時間が6時間を切ると、リスク判断能力が30%低下する。

疲労によるリベンジトレードが最も危険なパターン。22時に-20pipsだったポジションが、深夜2時には-80pipsに膨らんでいる。「ここまで来たら、もう戻るまで待つしかない」──これが破滅への入口。

家族への罪悪感も無視できない。スマホの光で配偶者を起こしてしまった経験、ありませんか? 「また相場?」という冷たい視線。FXが家庭不和の原因になっている家庭は、想像以上に多い。

SNSの「爆益報告」を深夜に見るのも危険。「今夜だけで+200pips!」という投稿に刺激され、冷静さを失う。でも考えてみてほしい。本当に勝っている人は、深夜にSNSで自慢するだろうか?

週末リスク管理──金曜深夜のポジション管理心理

金曜日の深夜。NYクローズまであと1時間。

週末ギャップ(窓開け)のリスクを考えると、ポジションを閉じるべき。でも「スワップポイント3日分もらえる」という甘い誘惑。特にドル円ロングなら、3日で300円程度のスワップが入る。

しかし、2019年1月のフラッシュクラッシュを思い出してほしい。ドル円が3分で400pips下落した。あの日、週末ポジションを持ち越した人たちの証拠金維持率は、月曜朝に悲惨なことになった。

「今週は地政学リスクもないし、大丈夫だろう」──この油断が命取り。ブラックスワン(予測不可能な出来事)は、平穏な時にこそ現れる。

週末に相場のことを考えない「デジタルデトックス」は、メンタルヘルスの観点で重要。土日はFXアプリを開かない、チャート関連のSNSを見ない。この習慣が、月曜朝の冷静な判断力を保つ。

今夜のトレーダー心理ポイント

ECB理事会後の今夜、特に注意すべき心理的バイアスは3つ。

1. 確証バイアス ラガルド総裁の発言を、自分のポジションに都合よく解釈してしまう傾向。「利上げ継続」と聞いて、ユーロロングの人は強気材料と捉え、ショートの人は既に織り込み済みと考える。

2. アンカリング効果 東京時間の高値・安値に固執しすぎる心理。「ドル円149.50で反発したから、今夜もここがサポート」という思い込み。欧州勢は東京時間のテクニカルを無視することがある。

3. 損失回避 今夜こそ取り返したい気持ちが強すぎて、普段の2倍のポジションサイズでエントリーしてしまう危険。

今夜の1行メンタルアドバイス: 「明日も相場はある。今夜逃した機会より、今夜守った資金の方が価値がある。」

疲れを感じたら、指値・逆指値を入れて寝る勇気を。相場は逃げない。でも、睡眠不足で判断力を失った資金は、二度と戻らない。

FAQ

Q: 欧州時間はなぜボラティリティが急に高くなるのですか? A: ロンドン市場は世界最大の外国為替取引センターで、1日の取引量の約40%を占めます。大口機関投資家の参入により、東京時間の薄い商いとは流動性が桁違いに増加するためです。

Q: 夜中にポジションを持ったまま寝ても大丈夫ですか? A: 必ず逆指値(ストップロス)を設定してください。深夜のフラッシュクラッシュやギャップダウンから資金を守る唯一の方法です。「寝られる枚数しか持たない」が鉄則です。

Q: ロンドンフィックスとは何ですか?日本のトレーダーに影響はありますか? A: 日本時間0時(夏時間24時)に決まるロンドン市場の基準レート決定時刻です。この前後15分は大口取引が集中し、急激な値動きが起きやすいため、日本の深夜トレーダーは特に注意が必要です。

Q: 深夜トレードで睡眠不足にならない方法はありますか? A: 23時以降は新規エントリーを禁止し、既存ポジションの管理のみに集中する。または指値・逆指値を設定して完全にチャートから離れる「寝トレ」スタイルがおすすめです。

Q: 金曜日のNYクローズ前にポジションを閉じるべきですか? A: 週末ギャップリスクを考慮し、特に重要な経済イベントが控えている場合は決済を推奨します。スワップポイント目的の持ち越しは、リスクとリターンを冷静に比較してから判断してください。

Q: ECBなどの重要指標発表時は、どのような心理状態で臨むべきですか? A: 「指標ギャンブル」は避け、発表後の相場の反応を確認してからエントリーする後出しジャンケン戦略が安全です。発表前のポジションは、宝くじを買うのと同じリスクがあります。