1989年に出版されたジャック・シュワッガーの『マーケットの魔術師(Market Wizards)』は、FX・株式・先物のプロトレーダーへのインタビュー集だ。
マイケル・マーカス、ブルース・コフナー、リチャード・デニス、エド・セイコタ──彼らは全員、数百万ドルから数十億ドルを稼いだ伝説的なトレーダーだ。
バックグラウンドも手法も異なる彼らに、共通するメンタルのパターンがある。今回は特に印象深かった3つを取り上げる。
共通点1:全員が「損失管理」を最優先にしていた
インタビューの中で、全てのトレーダーが口を揃えて言っていたことがある。
「いくら稼ぐかよりも、いくら失わないかが重要だ」
マイケル・マーカスはこう語っている:「最も重要なことは、ポジションが間違っていると分かったときに、素早く撤退することだ。それが出来れば、かなりのことが許される」
ブルース・コフナーも同様に:「ルールナンバーワンは:絶対に損失を大きくするな。これが守れれば、後は何とかなる」
これらのトレーダーが共通して持っていたのは「資本保全への執着」だ。利益を最大化することより、既存の資本を守ることを最優先にしていた。
FXへの応用: 口座の何パーセントをリスクにするかを厳密に決め、それを超えるポジションを取らない。多くのプロが推奨するのは、1トレードで口座の1〜2%以下のリスクだ。
共通点2:「自分のエッジ」を明確に理解していた
魔術師たちは全員、「なぜ自分は利益を上げられるのか」を明確に説明できた。
リチャード・デニスは「トレンドフォロー」という明確なエッジを持ち、そのシステムを厳密に遵守した。エド・セイコタはコンピューターシステムによるトレンドフォローに自分のエッジがあると確信していた。
彼らは、エッジのない状況(自分の手法が機能しない相場環境)では積極的にトレードを控えた。
「今日は自分の手法が機能する環境か?」──この問いを毎日していた。
FXへの応用: 自分がどんな相場環境で利益を上げやすいかを把握する。トレンド相場で機能する手法ならば、レンジ相場では積極的にトレードしない。「自分のエッジ」が発揮できる環境だけにフォーカスする。
共通点3:感情ではなく「プロセス」で評価していた
インタビューの中で印象的だったのが、魔術師たちの「負けトレード」への態度だ。
彼らの多くが、「ルールに従って執行したトレードは、結果が損失でも『良いトレード』だ」という考え方を持っていた。
リチャード・デニスの言葉:「システムのルールに従ったトレードで損失が出ても、私はそれを失敗とは思わない。システムに反したトレードで利益が出たとしても、それは成功ではない」
この「プロセス重視」の考え方は、短期的な勝ち負けへの執着から解放してくれる。
FXへの応用: トレード日誌に「結果(損益)」だけでなく「プロセス(ルールに従っていたか)」を記録する。ルール遵守を最優先に評価することで、感情的な判断を減らせる。
本書から学んだ「自分に合った手法を見つける重要性」
本書の魔術師たちが使っているトレード手法は全員異なる。超短期トレーダーもいれば、数ヶ月ポジションを保持するスイングトレーダーもいる。テクニカル派もいれば、ファンダメンタルズ派もいる。
しかし全員に共通するのは「自分の手法を深く信じていた」ことだ。
自分の手法への確信は、連敗が続いても揺らがなかった。「システムは長期的に機能する。短期的な損失は統計的なばらつきだ」という冷静な確信が、感情的なブレを防いでいた。
結論: まず自分の手法を徹底的に検証し(バックテスト・フォワードテスト)、その手法が長期的に機能することを確信した上でトレードする。この確信がなければ、損失のたびに手法を変えてしまう「迷走」が続く。
本書の評価
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 読みやすさ | ★★★★☆ |
| 実践への応用性 | ★★★★★ |
| メンタル面への示唆 | ★★★★★ |
| FX初心者への推奨度 | ★★★★☆ |
FXを本格的に学ぼうとする人に、真っ先に読んでほしい一冊だ。
テクニックよりもメンタルの重要性を、伝説のトレーダーたちの言葉が雄弁に語ってくれる。
